2000年受信報告

公益財団法人 日本中毒情報センター

はじめに

2000年は沖縄サミットが開催され、(財)日本中毒情報センター(JPIC)はその救急医療対策において、化学兵器および兵器以外の化学物質による中毒を含むテロ対策の一助を担った。何事も無く終わったことは喜ばしいことである。
(財)日本中毒情報センターの活動も、2000年で14年目を迎えた。我々は本稿の報告対象となる電話応答以外に、書籍やCD-ROMはもちろん、ファクシミリを利用した自動応答システムやインターネットでの情報提供を行っている。中毒自動情報Faxシステムは、1997年2月より開始されており、今までに1,596件を数えている。インターネットについては、毒物混入事件を契機に図られたJPICの機能強化策のひとつとして、1999年4月1日よりホームページ(http://www.j-poison-ic.or.jp)をJPIC独自のサーバーから発信している。このホームページには、一般公開が可能と判断した家庭用品、自然毒について中毒起因物質の毒性情報なども収載している。2000年末までのアクセス件数は、ミラーサイトも含め、185,000件となっている。また、タバコ専用応答電話(06-6875-5199)の昨年1年間の利用件数は8,151件(1日約22件)であり、開始(1996年5月1日)からのアクセス件数は、33,839件を数え、現在では1日20~30件とコンスタントに利用されている。このように、オペレータによる電話応答(大阪とつくばの6回線)以外の媒体も大いに活用されている。
電話応答による情報提供は従来と同様の体制で行い、今回も2000年の受信記録をすべて昨年同様の方法で集計解析し、以下に報告する。

1. 集計方法

集計の対象は、2000年1月1日から2000年12月31日までの1年間に受信したヒトの急性中毒に関するデータ38,542件である。受信データにはダイヤルQ2、医療機関専用有料電話、賛助会員専用電話で受信した記録すべてが含まれる。欠損項目については、不明件数として集計対象に加算して、相対構成比を計算した。なお、対象には「タバコ専用応答電話」の利用件数8,151件は含まない(この件数を加えると2000年1年間にJPICが受信したタバコに関する問い合わせ件数は13,192件となる)。起因物質については、昨年と同様、複数物質を摂取した場合であっても、データ処理上すべて1種として記録し集計した。

2. 集計内容とその結果

1)都道府県別 受信件数と連絡者のうちわけ

2) 起因物質別 受信件数と連絡者のうちわけ

3)患者年齢層別 受信件数と連絡者のうちわけ

4)起因物質別 患者の性別と年齢層別 受信件数

5)発生場所別 受信件数

6)起因物質数別 受信件数

7)患者年齢層別 受信件数と発生状況のうちわけ

8)年齢層別 摂取経路別 受信件数

9)起因物質別 年齢層別 受信時症状の有無

10)起因物質分類別 受信件数上位品目

11)品目別 受信件数

家庭用品の件数は去年より約900件増加している。そのうち、洗剤併用による塩素ガスの件数が去年に比べ約3倍に、また園芸用品の件数も去年に比べ2倍に増加している。逆に水銀体温計は約100件減少している。
医療用医薬品のうち、精神神経用剤、抗うつ剤の件数が増加している。特に抗うつ剤のその他が約3倍に増加しており、表には示していないがそのほとんどがSSRI (選択的セロトニン再取り込み阻害剤)で71件中58件である。
食品、その他のうち、ビタミン剤、カルシウム剤、プロポリスエキスなどの健康食品が去年に比べ約2倍に増加している。

12)発生時刻分布

13)動物の中毒に関する受信件数

おわりに

集計の結果、問い合わせられた起因物質や事故発生状況の傾向は例年とほぼ同様の結果を示した。品目別受信件数においては世相を反映し、若干ではあるが変化がみられた。抗うつ剤であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)が1999年5月、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)が2000年9月に日本で発売され、それに伴い受信件数も増加している。
国内で毎年新規に販売されたり、処方変更される商品は膨大な数に達するが、少なくともその成分・組成等は、商品が市場に登場すると同時に把握できれば、より的確に情報提供できる。新しく合成・発見される化学物質や、次々に解明される既存の化学物質の毒性情報も含め、これらの情報の収集に日々努力しているが、まだまだ(財)日本中毒情報センターにとっての課題である。関係各位・団体のさらなるご協力をお願いしたい。
最後に中毒110番の問い合わせ電話番号を紹介する。

[中毒110番]
ダイヤルQ2 
0990-50-2499 24時間 無休(大阪)
0990-52-9899 9:00~17:00 12/31~1/3を除く(つくば)

医療機関専用有料電話
06-6878-1232 24時間 無休(大阪)
0298-51-9999 9:00~17:00 12/31~1/3を除く(つくば)

賛助会員専用電話
(賛助会員にのみ専用番号を通知。1年毎更新)
なお、賛助会についての資料請求は、以下へFaxにてお申し込み下さい。
(財)日本中毒情報センター本部事務局 FAX 0298-56-3533